私は本が好きでいろいろな本を読みますが、夜のお供はやっぱり「ミステリー」でしょうか?
小さいころ読んだ「江戸川乱歩」や「横溝正史」は怖かったですが、それと同時に読んでいてとてもおもしろく、やめられなかった記憶があります。
1980年代に入ってしばらく「ミステリー」からは離れていましたが、1980年代の終わりごろに読んだ「十角館の殺人」や「占星術殺人事件」などに、また引き込まれてしまいました。
今ではすっかり中毒と言えるかもしれません。
「ミステリー」はその歴史的過程の中で、ほかの文学作品の傾向や設定、あるいは世相の変遷などを吸収して、さまざまなバリエーションを生み出し、その類まれなる多様性から、いろいろな性格や立場の人がたのしめる、ふところの深いエンターテイメント文学に成長しています。
まさに「極上の娯楽」と言えるのではないでしょうか。
この記事では、「ミステリー」が好きだけれどそれ程詳しくは知らない方のために、最低限押さえておきたい「ミステリー」の歴史的流れと、その流れの中で生まれ出た、さまざまな「ミステリの主要ジャンル」についてお話ししていくことにしましょう。
この記事を読むことで、「ミステリー」とそのバリエーションの全体像を大雑把につかみ取ることができ、より効率よく「ミステリー」をたのしむことができるようになるかもしれません。
(「【 】の作家名称」は、検索サイト「Yahoo!」にリンクされており、該当する作家や作品などの詳細情報を得ることができます)
この記事を読んでほしい人
- 「ミステリー」についてある程度知っておきたい人
- 「ミステリの主要ジャンル」には、どんなものがあるのか気になる人
- 「推理小説」を読んでみたいと思ったり、映像作品を見たいと思った人
- 「ミステリの主要ジャンル」についてあまり詳しく知らない人
- 「ミステリー」や「推理小説」が大好きな人
ミステリーへのお誘い
欧米で生まれたミステリー(推理小説)は、日本に伝わり、独自の大発展を遂げます。
ちょうど中国で生まれたラーメンが、日本でオリジナルを凌駕する大発展を遂げたのと同じような感じです。
今や日本を代表する文学ジャンルのひとつと言えるのではないでしょうか。
ところで、一口にミステリー(推理小説)といっても、いろいろあるって知ってましたか?
ミステリーというスタイルがあらゆる分野と結びついて共存が可能なせいか、現代にいたるまで多彩なミステリの主要ジャンルが展開されています。
ミステリー(推理小説)好きなら当然知っているかもしれませんが、ここでちょっと整理してみましょう。
新しいミステリの主要ジャンルが出てくる可能性もあるかも
かつて「ミステリーは既に死んだ」と言われた時期もありました。
ミステリーは様式性が強かっただけに、書き手側だけでなく読み手側も行き詰まりを感じてしまったということだったのか、今では考えられないような灰色の時代を経験しています。
その意味では現代は書き手側も読み手側も成熟をして、ミステリーにとって幸せな時代になったと言えるかもしれません。
ミステリーもさまざまな分野と結びつき、昔では思いつきもしなかったスタイルで楽しむことができるようになりました。
これからも、まだまだ新しい「ミステリの主要ジャンル」が出てくるかもしれません。
ほんとにミステリーはサブジャンルが多くて、改めて驚きますが、それだけ愛されているんですね。
ミステリー(推理小説)は、その人の趣味嗜好に合ったいろいろな楽しみ方ができるのがいいところです。
明日は何冊か新しくミステリーを買ってみてはどうでしょう。
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■本格ミステリー
「本格ミステリー(本格推理)」は、事件の真相に至る手掛かりを、小説中に全て示し、読者に対してフェアな形で作中の登場人物が真相を導き出す形式の小説。
ミステリー(推理小説)の中では、最も一般的で古典的なジャンルです。
「本格」は日本における呼称で、戦前は「本格」以外の形式の推理小説は、全て「変格」と呼ばれていました。
欧米ではそれらは、「フーダニット」や「ハウダニット」「ホワイダニット」「パズラー」などと呼ばれます。
「本格」に求められるのは、「解決の論理性」「真相への手がかりが全て作品中で示されること」「地の文に虚偽を書かないこと」などで、それらすべての条件を満たしていなければならないとされています。
作者によっては「読者への挑戦状」と題し、そこまでで真相に必要な全ての手掛かりが出そろったことを告げ、真相に至る論理的な事件解決を明示的に挑戦することもあります。
密室殺人など、不可能犯罪を扱った作品も数多く、名作ぞろいのジャンル。
【代表的作家】
◆イギリス
■【アーサー・コナン・ドイル】
■【アガサ・クリスティ】
■【G・K・チェスタトン】
■【ジョイス・ポーター】
■【F・W・クロフツ】
■【バロネス・オルツィ】
■【イーデン・フィルポッツ】
■【ドロシー・L・セイヤーズ】
◆アメリカ
■【エラリー・クイーン(バーナビー・ロス)】
■【ヴァン・ダイン】
■【ディクスン・カー(カーター・ディクスン)】
■【レックス・スタウト】
■【エドガー・アラン・ポー】
◆フランス
◆日本
■【江戸川乱歩】
■【横溝正史】
■【高木彬光】
■【大下宇陀児】
■【小栗虫太郎】
■【甲賀三郎】
■【大阪圭吉】
■【蒼井雄】
■【濱尾四郎】
■【鮎川哲也】
■【泡坂妻夫】
■【仁木悦子】
■【笹沢左保】
■【島田荘司】
■【笠井潔】
■新本格ミステリー
「新本格ミステリー(新本格推理)」とは、本来は「新しい本格」という程度の意味であり、他の国でもそういう呼称は使われることがありますが、日本で使われる場合は特に、1980~90年代にデビューしたミステリー作家とその作品のことを指します。
狭義では、「綾辻行人」や「有栖川有栖」「法月綸太郎」「我孫子武丸」などの新本格の第一世代とされる作家たち、および、彼らの作品に対してそう呼ばれます。
「新本格ミステリー」は、古典的ミステリーのうち、特に「本格ミステリー」を模範として強く意識しながら、新しい時代的背景や社会的背景に合った作風にアップデートして、以後の日本におけるミステリーに多大な影響を与えました。
これらの作家・作品に対して「新本格」という言葉が初めて使われたのは、「綾辻行人」の第2作目の「水車館の殺人」(1988)の帯の言葉とされています。
「新本格ミステリー」がいつ始まったかについては、比較的はっきりしていて、1987年に、「綾辻行人」が講談社から、「島田荘司」の推薦を得て、『十角館の殺人』(講談社ノベルス)でデビューしたのを、始まりとすることが多いです。
そしてその後、「島田荘司」が「本格ミステリー宣言」(1989)で、本格ミステリーの系譜を擁護する評論を展開し、鮎川哲也などの本格の先輩作家たちも本格ミステリーの新人の発掘・育成に尽力した結果、大きなムーブメントとなり、現在に至ります。
この一連の盛り上がりを指して、「新本格ムーブメント」(または、ミステリ作家でもあり、評論家でもある「笠井潔」が提唱した呼称「本格ミステリの第三の波」)などと呼ぶ場合もあるようです。
【代表的作家】
◆日本
■【綾辻行人】
■【有栖川有栖】
■【法月綸太郎】
■【我孫子武丸】
■【折原一】
■【北村薫】
■【芦辺拓】
■【歌野晶午】
■【二階堂黎人】
■【若竹七海】
■【麻耶雄嵩】
■【山口雅也】
■【京極夏彦】
■【倉知淳】
■【愛川晶】
■【霞流一】
■【西澤保彦】
■【柄刀一】
■【北森鴻】
■【森博嗣】
■【高田崇史】
■【舞城王太郎】
■【西尾維新】
■【東野圭吾】
■【米澤穂信】
■ハードボイルド
事件に対して、登場人物が自ら行動を起こし立ち向かっていき、論理的で内面的な思索よりも、非情で妥協を許さない行動的・肉体的な方法により事件を解決する形式の小説。
「レイモンド・チャンドラー」や「ダシール・ハメット」「ローバート・B・パーカー」などが代表的な作家と言われています。
私立探偵が主役であっても、非情さを前面に押し出さないタイプのものは「ソフトボイルド」と呼ばれます。
また、「ハードボイルド」の反対となるミステリーのサブジャンルとしては、「コージー・ミステリー」があり、これは「ハードボイルド」が持つ暴力的表現や非日常性を極力排除したもので、「アガサ・クリスティ」の「ミス・マープル」シリーズなどが代表作。
【代表的作家】
◆アメリカ
■【レイモンド・チャンドラー】
■【ダシール・ハメット】
■【ミッキー・スピレイン】
■【ロス・マクドナルド】
■【ローバート・B・パーカー】
■社会派ミステリー
時代が持つ社会的背景やリアリティを重視し、それらの矛盾や問題が生み出したともいえる、社会性のある事件や犯人を題材として扱うミステリー(推理小説)の形式。
事件そのものや登場人物の内面や行動だけでなく、事件の背景となった社会的・時代的問題を綿密に描写していくのを特徴とします。
日本では1960年代ごろから、それまで主流だった「本格」に代わってミステリーの主流であり、1980年代の新本格の登場までその状態が続きました。
「松本清張」や「高村薫」がその代表と言えるでしょう。
【代表的作家】
◆日本
■【松本清張】
■【高村薫】
■【森村誠一】
■【水上勉】
■【黒岩重吾】
■【有馬頼義】
■【宮部みゆき】
■【桐野夏生】
■【東野圭吾】
■倒叙ミステリー
犯人が殺人事件を犯すシーンから始まり、犯行時の子細なミスから登場人物の刑事や探偵が犯人を追い詰めていくという形式のミステリーです。
最初から犯人や手口が分かっているミステリーで、「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のスタイルだといった方が分り易いでしょうか。
犯人が追い詰められていく心理描写が特徴であり、最大の魅力。
また、犯罪者の内面に目を向けて、犯罪に至る過程を描いたものを、特に「犯罪心理ミステリー」といいます。
【代表的作家】
◆イギリス
■【F・W・クロフツ】
■【リチャード・ハル】
■【アントニー・バークリー(フランシス・アイルズ)】
◆アメリカ
◆日本
■【貴志祐介】
■【石持浅海】
■【岡嶋二人】
■【相沢沙呼】
■【大倉崇裕】
■【天野節子】
■【西尾維新】
■【井上真偽】
■【古野まほろ】
■【鯨統一郎】
■【深水黎一郎】
■【倉知淳】
■【夏樹静子】
■【松本清張】
■【我孫子武丸】
■メタミステリー
推理小説(もしくは、小説という媒体自体)の形式や特徴・枠組みそのものにトリックがある形式のミステリー。
「読者が犯人」「著者が犯人」というパターンなどはこの形式に含まれます。
こうした、推理小説自体の形式・特徴・枠組みに対して否定したり、疑義を呈するような作品を、「アンチミステリー」ということもあります。
【代表的作家】
◆日本
■【竹本健治】
■【赤川次郎】
■【芦辺拓】
■【飛鳥部勝則】
■【綾辻行人】
■【鮎川哲也】
■【乾くるみ】
■【今邑彩】
■【歌野晶午】
■【折原一】
■【恩田陸】
■【笠井潔】
■【霞流一】
■【筒井康隆】
■【中井英夫】
■【東野圭吾】
■【舞城王太郎】
■【麻耶雄嵩】
■【三津田信三】
■【山口雅也】
■青春ミステリー
主人公やその周辺の登場人物に、思春期の人物を配したミステリーの形式。
物語の進行に伴って、多くの場合その人物が事件を通して成長を遂げる姿が描かれます。
中でも学校や学校生活を題材、もしくは、舞台にしたものを、特に「学園ミステリー」ということもあります。
漫画やTV番組・映画などで人気を博した「金田一少年の事件簿」は、ここに入るんでしょうか。
【代表的作家】
◆日本
■【樋口有介】
■【青崎有吾】
■【浅倉秋成】
■【天沢夏月】
■【如月新一】
■【貴志祐介】
■【河野裕】
■【柴村仁】
■【東川篤哉】
■【光原百合】
■【詠坂雄二】
■【米澤穂信】
■【恩田陸】
■【赤川次郎】
■【相沢沙呼】
■【辻村深月】
■【綾辻行人】
■【若竹七海】
■【法月綸太郎】
■トラベルミステリー
有名な観光地が舞台であったり、探偵役の登場人物が観光に関わったりする、もしくは、交通機関・交通手段によるトリックが使用されるミステリーの形式。
旅情や風土といった旅行記的側面も強くあり、映像化しやすいため映像作品も多く、日本では人気の「ミステリの主要ジャンル」の1つです。
シリーズ化しやすいのも特徴で、「西村京太郎」の「十津川警部」シリーズや内田康夫の「浅見光彦」シリーズなど、息の長いシリーズが多いのも人気が高い理由かもしれません。
シリーズもの以外にも、「松本清張」の「点と線」をはじめ、名作がそろっています。
【代表的作家】
◆イギリス
◆日本
■【松本清張】
■【西村京太郎】
■【山村美紗】
■【鮎川哲也】
■【内田康夫】
■【赤川次郎】
■【梓林太郎】
■【有栖川有栖】
■【恩田陸】
■【木谷恭介】
■【島田荘司】
■【津村秀介】
■【豊田巧】
■【柴田よしき】
■法廷ミステリー
法廷ミステリーは、探偵役の登場人物が検事や弁護士であり、法廷が物語の重要な舞台となる形式のミステリー。
有罪と思われる被告の無実を証明して真犯人を暴いたり、無実と思われた被告の犯罪を立証したりなど、法廷での逆転劇が魅力のミステリーです。
「E.S.ガードナー」の「ペリー・メイスン」シリーズや、「和久峻三」の「赤かぶ検事」シリーズなどが有名。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
■【E・S・ガードナー】
■【ディクスン・カー(カーター・ディクスン)】
◆ドイツ
◆日本
■【和久峻三】
■【大岡昇平】
■【高野和明】
■【柚月裕子】
■【宮部みゆき】
■【芦辺拓】
■【姉小路祐】
■【折原一】
■【加茂隆康】
■【小泉喜美子】
■【小杉健治】
■【佐々木譲】
■【師走トオル】
■【高木彬光】
■【中嶋博行】
■【中山七里】
■【夏樹静子】
■【法坂一広】
■【松本清張】
■警察ミステリー
警察ミステリーは、刑事が主人公のミステリーのことで、事件の謎解きより警察の捜査活動や警察組織内での暗闘の描写に重点が置かれることが多いです。
「エド・マクベイン」の「87分署」シリーズ、日本では「西村京太郎」の「十津川警部」シリーズなどの作品が名が知られています。
日本人が比較的好きな分野で、小説でもテレビや映画でも結構名作が多く創作されました。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
◆フランス
◆日本
■【西村京太郎】
■【山村美紗】
■【相場英雄】
■【我孫子武丸】
■【逢坂剛】
■【大倉崇裕】
■【大沢在昌】
■【香納諒一】
■【鏑木蓮】
■【今野敏】
■【佐々木譲】
■【雫井脩介】
■【柴田よしき】
■【中山七里】
■【貫井徳郎】
■【乃南アサ】
■【誉田哲也】
■【柚月裕子】
■【横山秀夫】
■歴史ミステリー
歴史上の謎が、事件の重要な構造・構成にリンクしているか、あるいは、事件とよく似た構造になっており、それを探偵役の登場人物が解き明かすことで、登場人物たちが直面している事件も解決するという形式のミステリー。
「ジョセフィン・ティ」の「時の娘」が代表と言えるが、日本でも「高田崇史」「高橋克彦」「井沢元彦」など多くの作家がこのジャンルを手がけています。
ちなみに、過去の時代を舞台とするミステリーは「時代ミステリー」と呼ばれることもあり、日本では特に江戸時代を舞台とした「名奉行もの」「捕り物帳もの」といった人気のシリーズもあります。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
◆イタリア
◆日本
■【高田崇史】
■【高橋克彦】
■【井沢元彦】
■【芦辺拓】
■【鯨統一郎】
■【北森鴻】
■【浅倉卓弥】
■【高木彬光】
■【長尾誠夫】
■【中薗英助】
■【中津文彦】
■【斎藤栄】
■【山田風太郎】
■【典厩五郎】
■【加藤廣】
■ホラーミステリー
ミステリーにホラーの要素が加わった形式のもの。
論理を超えた恐怖・不思議・異常性の様相と論理的な推理・捜査などのブレンドが魅力のミステリー。
「綾辻行人」や「三津田信三」などが代表と言えます。
「三津田信三」は「刀城言耶」シリーズの「水魑(みづち)の如き沈むもの」で、2010年の第10回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞しています。
【代表的作家】
◆日本
■【綾辻行人】
■【三津田信三】
■【京極夏彦】
■【恒川光太郎】
■【貴志祐介】
■【我孫子武丸】
■【桐野夏生】
■【飛鳥部勝則】
■【井上夢人】
■【五十嵐貴久】
■【今村昌弘】
■【歌野晶午】
■【小川勝己】
■【恩田陸】
■【河合莞爾】
■【澤村伊智】
■【白井智之】
■【鈴木光司】
■【内藤了】
■【中山七里】
■【西澤保彦】
■【二宮敦人】
■【藤木稟】
■【誉田哲也】
■【前川裕】
■スパイミステリー
スパイが主人公のミステリーで、謎解きをする探偵役も基本的にはスパイがしていきます。
物語の中で起こる事件に加えて、国際的謀略、荒唐無稽なアクションやスパイツール、スパイ同士が絡んだ知恵比べなどの要素が力点を置いて描かれます。
「イアン・フレミング」の「007ジェームズ・ボンド」シリーズが有名ですが、このジャンルはどちらかと言えば国内よりも海外に有名作品が多いです。
【代表的作家】
◆イギリス
■【イアン・フレミング】
■【ギャビン・ライアル】
■【ジョン・ル・カレ】
■【フレデリック・フォーサイス】
◆日本
■【柳広司】
■【高村薫】
■【五條瑛】
■【野沢尚】
■【吉田修一】
■サスペンスミステリー
登場人物が、予期せぬ事件に巻き込まれて、その状況から逃れる為に事件に挑んでいき、隠された真相にたどり着くという形式のミステリー。
TVの2時間ドラマなどでお馴染みのスタイルと言えます。
そういう意味では、日本人にとって一番一般的なミステリーかもしれません。
「西村京太郎」や「宮部みゆき」「山村美紗」など、このジャンルで著名な書き手も数多いです。
ピンチに陥った登場人物が、知恵と行動と勇気で危ない状況を乗り越えていくのを、感情移入しながら味わえるのが一番の魅力。
【代表的作家】
◆イギリス
◆日本
■【西村京太郎】
■【山村美紗】
■【宮部みゆき】
■【東野圭吾】
■【綾辻行人】
■【島田荘司】
■【横溝正史】
■【松本清張】
■【米澤穂信】
■【湊かなえ】
■【京極夏彦】
■【筒井康隆】
■【赤川次郎】
■【伊坂幸太郎】
■冒険ミステリー/怪盗ミステリー
「冒険ミステリー」は、主人公が自ら事件を起こし、または、自ら事件に巻き込まれて、追っ手の追及を知識と知恵を駆使して乗り越えていき、さまざまな困難を切り抜けて真相にたどり着く形式のミステリー。
とくに、主人公が「泥棒」「怪盗」を名乗り、華麗な推理と見事な機転で、ライバルを出し抜き、獲るのが難しい「お宝」を手中にし、ときに事件の真相や黒幕を暴き出した上で、最後には鮮やかに追手や警察から逃げおおせるスタイルを「怪盗ミステリー」とも言います。
「モーリス・ルブラン」の「アルセーヌ・ルパン」シリーズが代表で、漫画やTV・映画で人気のある「ルパン三世」「怪盗キッド」シリーズもこの範疇に入ります。
日本では「江戸川乱歩」の「怪人二十面相」が登場するシリーズが最も有名ですね。
敵役として、名探偵や切れ者の好敵手が登場し、主人公と知恵比べを展開するのも、このジャンルのミステリーが持つ面白さです。
サスペンスが持つドキドキ感だけでなく、事件が終わった後の爽快感も魅力と言えます。
【代表的作家】
◆イギリス
■【ギャビン・ライアル】
■【ディック・フランシス】
■【E・W・ホーナング】
◆アメリカ
■【フレデリック・I・アンダースン】
■【トマス・W・ハンシュー】
■【E・S・ガードナー】
■【エドワード・D・ホック】
■【ヘンリー・スレッサー】
◆フランス
◆日本
■【江戸川乱歩】
■【芦辺拓】
■【二階堂黎人】
■【法月綸太郎】
■【神永学】
■SFミステリー
設定にSFの要素を加えたミステリーの形式。
作品の一部、または、全部に、非現実的とも言える状態や現象・能力・世界観などを設定として取り込んだもの。
SFの要素はさらに他のジャンルともつながり、「SF本格ミステリー」や「SFサスペンスミステリー」など、多彩な展開を見せるジャンル。
名作も多数存在します。
漫画やTV番組・映画で大人気の「名探偵コナン」も、このジャンルの1つと言えるかもしれません。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
■【アイザック・アシモフ】
■【ジェリー・ユルスマン】
■【オースン・スコット・カード】
■【アルフレッド・ベスター】
■【ラリー・ニーヴン】
■【ジョン・ヴァーリイ】
■【ディクスン・カー(カーター・ディクスン)】
◆日本
■【森博嗣】
■【山口雅也】
■【宮部みゆき】
■【乾くるみ】
■【海野十三】
■【有栖川有栖】
■【二階堂黎人】
■【芦辺拓】
■【石持浅海】
■【西澤保彦】
■【田中啓文】
■【荒巻義雄】
■【岡嶋二人】
■【貴志祐介】
■【東野圭吾】
■【夢野久作】
■【鏡明】
■【都筑道夫】
■【法条遥】
■【山田宗樹】
■【筒井康隆】
■【赤川次郎】
■【綾崎隼】
■【井上夢人】
■【河合莞爾】
■【北村薫】
■【谺健二】
■【小林泰三】
■【沢木まひろ】
■【柴田よしき】
■【小松左京】
■【星新一】
■【柄刀一】
■【谷川流】
■【貫井徳郎】
■日常ミステリー
犯罪や法に触れるような事件ではなく、日常の中でふと目にするような不思議や謎・ちょっとした事件を扱うミステリーの形式。
「人の死なないミステリー」ともいわれ、海外では「アガサ・クリスティ」の「ミス・マープル」シリーズや「アイザック・アシモフ」の「黒後家蜘蛛の会」など多くの良作があります。
日本では、「北村薫」が多く作品を発表し、「加納朋子」や「光原百合」なども有名。
「三上延」の「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズなども多くのファンを獲得しており、人気が高いジャンル。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
◆日本
■【北村薫】
■【加納朋子】
■【光原百合】
■【三上延】
■【相沢沙呼】
■【青井夏海】
■【我孫子武丸】
■【大倉崇裕】
■【大崎梢】
■【北森鴻】
■【倉知淳】
■【坂木司】
■【澤木喬】
■【田中啓文】
■【戸板康二】
■【似鳥鶏】
■【初野晴】
■【はやみねかおる】
■【東野圭吾】
■【松尾由美】
■【水原佐保】
■【森谷明子】
■【米澤穂信】
■【若竹七海】
■【蒼井上鷹】
■【青崎有吾】
■【碧野圭】
■【阿部暁子】
■【天祢涼】
■【伊坂幸太郎】
■【石持浅海】
■【乾くるみ】
■【岡崎琢磨】
■【如月新一】
■【近藤史恵】
■【佐藤青南】
■【篠田真由美】
■【柴村仁】
■【十階堂一系】
■【関口尚】
■【友井羊】
■【七河迦南】
■【長沢樹】
■【樋口有介】
■【麻耶雄嵩】
■ユーモアミステリー
ユーモア調の強いミステリーの形式。笑いや可笑しさを交えて軽く読めるライトノベルズタイプのものが多いです。
「泡坂妻夫」の「亜愛一郎」シリーズや「東川篤哉」の「謎解きはディナーのあとで」シリーズなど、愛すべき作品も数多くあります。
ちなみに、現実性を意図的に無視したトリックと結末のバカバカしさが特徴のミステリー、あるいは、結末を知って「そんなバカな!」と驚くような、笑えるミステリーのことを、特に「バカミス」といったりします。
「バカミス」という言葉は1990年代後半から使われ出しましたが、侮辱する意味合いではなく、どちらかと言えば、作品世界の意外性や娯楽性を「バカな」という驚きと賞賛によって評価するものであると言えます。
また、読後の読了感がイヤな感じが残る、後味の悪いミステリーのことを「イヤミス」ということもあります。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
◆日本
■【泡坂妻夫】
■【東川篤哉】
■【我孫子武丸】
■【伊坂幸太郎】
■【井上夢人】
■【大倉崇裕】
■【奥泉光】
■【折原一】
■【関口暁人】
■【天藤真】
■【富樫倫太郎】
■【七尾与史】
■【西澤保彦】
■【似鳥鶏】
■【貫井徳郎】
■【東野圭吾】
■【藤崎翔】
■【山田彩人】
■【横関大】
■【赤川次郎】
■医療ミステリー
医療ミステリーは、「医師または医療関係者」が「犯人もしくは主人公」のミステリーのことで、警察ミステリー同様、事件の謎解きよりも、医療行為や専門知識を利用したトリックや医療組織内での冷戦・暗闘がストーリー上重要な役割を果たしています。
海外では医療をテーマとしたミステリーが早くから作られ、近年では医療ミステリードラマ「Dr.HOUSE」や「BONES」が大ヒットするなど、医療ミステリーの質は高く、完全に市民権を得ています。
作家としては「ロビン・クック」などが有名です。
日本でも、「海堂尊」の「チームバチスタの栄光」の大ヒットで、一般にもよく知られるようになりました。
「海堂尊」が最も有名ですが、他にも「久坂部羊」や「仙川環」「帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)」などの作家が、医療ミステリー作家として知られています。
また、「知念実希人」の「天久鷹央の推理カルテ」シリーズなどの、今までの重い印象の残る医療ミステリーとはちょっと違ったライトな感じのものも出てきています。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
◆日本
■【海堂尊】
■【久坂部羊】
■【仙川環】
■【帚木蓬生】
■【知念実希人】
■【岡井崇】
■【霧村悠康】
■【逢坂剛】
■【鏑木蓮】
■【岩木一麻】
■【大鐘稔彦】
■【里見清一】
■【中脇初枝】
■【桂修司】
■【松葉紳一郎】
■【南杏子】
■【河原れん】
■【太田靖之】
■【貫井徳郎】
■【浅ノ宮遼】
■【浦賀和宏】
■【下村敦史】
■【多島斗志之】
■【中山七里】
■【東野圭吾】
■グルメミステリー
グルメミステリーは、「極上の料理や酒」や「美味しいもの」などが「謎」「物語」と絡んでいたり、「腕のいいシェフ」や「グルメ人」「美食家」「美味しいもの好き」が探偵役やワトスン役を務めるミステリーなどのことです。
「レストラン」や「ダイナー」「ビストロ」「カフェ」などが舞台のミステリーはもちろん、探偵の「好物」が随所に出てくるなど、あらゆる「グルメ」にまつわるミステリーが含まれるでしょう。
「癒し系のミステリー」であり、「日常ミステリー」など、他のジャンルとの親和性はかなり高いと言えるかもしれません。
けっこう昔からこの手のミステリーは多く書かれており、「美味しい料理や飲み物」とミステリーの取り合わせは、思いのほかよく合います。
日本でも、「近藤史恵」の、フレンチビストロが舞台の『ビストロ・パ・マル』シリーズや、不思議と居心地の良いカフェが舞台となる『カフェ・ルーズ』シリーズ、「柴田よしき」の」『風のベーコンサンド 高原カフェ日誌』『草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II』、「友井羊」の『スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫~』など、たくさんの上質な「グルメミステリー」が書かれているようです。
ほかにも「石持浅海」の『Rのつく月には気をつけよう』、「太田忠司」の『ミステリなふたり』、「北森鴻」の『メイン・ディッシュ』や『香菜里屋』シリーズ、「相沢泉見」の『貴公子探偵はチョイ足しグルメをご所望です』、「斎藤千輪」の『ビストロ三軒亭の謎めく晩餐』、「芦原すなお」の『ミミズクとオリーブ』など、良い作品が目白押し。
海外モノでは、「ダイアン・デヴィッドソン」の『クッキング・ママ』シリーズ、「ナン・ライオンズ&アイヴァン・ライオンズ」の『料理長(シェフ)殿、ご用心』、「マイケル・ボンド」の『パンプルムース氏』シリーズ、「リリアン・J・ブラウン」の『シャム猫ココ』シリーズなどが有名ですね。
名探偵としては、「レックス・スタウト」の『ネロ・ウルフ』シリーズ、「アガサ・クリスティー」の『エルキュール・ポアロ』『ミス・マープル』シリーズ、「ロバート・B・パーカー」の『スペンサー』シリーズ、「ジョアン・フルーク」の『お菓子探偵ハンナ』シリーズなどはどうでしょう。
【代表的作家】
◆イギリス
◆アメリカ
■【ダイアン・デヴィッドソン】
■【ナン・ライオンズ&アイヴァン・ライオンズ】
■【ジョアン・フルーク】
■【レックス・スタウト】
■【リリアン・J・ブラウン】
◆日本
■【近藤史恵】
■【柴田よしき】
■【友井羊】
■【北森鴻】
■【石持浅海】
■【太田忠司】
■【深緑野分】
■【相沢泉見】
■【斎藤千輪】
■【芦原すなお】
■【坂木司】
■【拓未司】
■【上田早夕里】
■【恩田陸】
■【宇江佐真理】
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この記事のまとめ
おもな内容のポイント整理
この記事のまとめ
- 「ミステリー」は日本で独自の大発展を遂げ、あらゆるジャンルと結びついてすそ野を広げた
- 様式性が強かったミステリーは、サブジャンルの幅を広げることでその閉塞感と停滞を乗り越えた
- 「本格ミステリー」「新本格ミステリー」などの「フーダニット」「ハウダニット」がその原点
- 「犯罪の社会的背景」「探偵の身分や環境」「事件の起こる場所」など様々な趣向のジャンルが生まれた
- ミステリーという形式は他のジャンルと融合させやすいため、今後も新しいサブジャンルがでてくるかも