tanteinikki-a047
 前回の記事ではミステリーの形式から代表的な分類をいくつか解説してみましたが、まだまだ紹介しきれていないミステリー・ジャンルはたくさんあります。

ほんとにジャンルが多くて改めて驚きますが、それだけ愛されているんですね。

ミステリー(推理小説)は、その人の趣味嗜好に合ったいろいろな楽しみ方ができるのがいいところです。

明日は何冊か新しくミステリーを買ってみてはどうでしょう。

まだまだ新しいミステリー・ジャンルが出てくる可能性も?

tanteinikki-suiri-atarasiimono
 かつて「ミステリーは既に死んだ」と言われた時期もありました。

ミステリーは様式性が強かっただけに、書き手側だけでなく読み手側も行き詰まりを感じてしまったということだったのか、今では考えられないような灰色の時代を経験しています。

その意味では現代は書き手側も読み手側も成熟をして、ミステリーにとって幸せな時代になったと言えるかもしれません。

ミステリー・ジャンルもさまざまな分野と結びつき、昔では思いつきもしなかったスタイルで楽しむことができるようになりました。

今回の記事では、多彩なミステリー・ジャンルの中から、前回よりも新しめのものやもう少しマイナーなものも解説してみましょう。

 法廷ミステリー

 法廷ミステリーは、探偵役の登場人物が検事や弁護士であり、法廷が物語の重要な舞台となる形式のミステリー。

有罪と思われる被告の無実を証明して真犯人を暴いたり、無実と思われた被告の犯罪を立証したりなど、法廷での逆転劇が魅力のミステリーです。

E.S.ガードナーの「ペリー・メイスン」シリーズや、和久峻三の「赤かぶ検事」シリーズなどが有名。

 警察ミステリー

 警察ミステリーは、刑事が主人公のミステリーのことで、事件の謎解きより警察の捜査活動や警察組織内での暗闘の描写に重点が置かれることが多いです。

エド・マクベインの「87分署」シリーズ、日本では西村京太郎の「十津川警部」シリーズなどの作品が名が知られています。

日本人が比較的好きな分野で、小説でもテレビや映画でも結構名作が多く創作されました。

 歴史ミステリー

 歴史上の謎が、事件の重要な構造・構成にリンクしているか、あるいは、事件とよく似た構造になっており、それを探偵役の登場人物が解き明かすことで、登場人物たちが直面している事件も解決するという形式のミステリー。

ジョセフィン・ティの「時の娘」が代表と言えるが、日本でも高田崇史・高橋克彦・井沢元彦など多くの作家がこのジャンルを手がけています。

ちなみに、過去の時代を舞台とするミステリーは「時代ミステリー」と呼ばれることもあり、日本では特に江戸時代を舞台とした「名奉行もの」「捕り物帳もの」といった人気のシリーズもあります。

 ホラーミステリー

 ミステリーにホラーの要素が加わった形式のもの。

論理を超えた恐怖・不思議・異常性の様相と論理的な推理・捜査などのブレンドが魅力のミステリー。

綾辻行人や三津田信三などが代表と言えます。

三津田信三は「刀城言耶」シリーズの「水魑(みづち)の如き沈むもの」で、2010年の第10回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞しています。

 スパイミステリー

 スパイが主人公のミステリーで、謎解きをする探偵役も基本的にはスパイがしていきます。

物語の中で起こる事件に加えて、国際的謀略、荒唐無稽なアクションやスパイツール、スパイ同士が絡んだ知恵比べなどの要素が力点を置いて描かれます。

イアン・フレミングの「007ジェームズ・ボンド」シリーズが有名ですが、このジャンルはどちらかと言えば国内よりも海外に有名作品が多いです。

 サスペンスミステリー

 登場人物が、予期せぬ事件に巻き込まれて、その状況から逃れる為に事件に挑んでいき、隠された真相にたどり着くという形式のミステリー。

TVの2時間ドラマなどでお馴染みのスタイルと言えます。

そういう意味では、日本人にとって一番一般的なミステリーかもしれません。

西村京太郎や宮部みゆきなど、このジャンルで著名な書き手も数多いです。

ピンチに陥った登場人物が、知恵と行動と勇気で危ない状況を乗り越えていくのを、感情移入しながら味わえるのが一番の魅力。

 怪盗ミステリー・冒険ミステリー

 主人公が自ら事件を起こし、または、自ら事件に巻き込まれて、追っ手の追及を知識と知恵を駆使して乗り越えていき、さまざまな困難を切り抜けて真相にたどり着く形式のミステリー。

モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズが代表で、TVの「ルパン三世」シリーズもこの範疇に入ります。

日本では江戸川乱歩の「怪人二十面相」が登場するシリーズが最も有名ですね。

敵役として名探偵や切れ者の好敵手が登場し、主人公と知恵比べを展開するのも、このジャンルのミステリーが持つ面白さです。

サスペンスが持つドキドキ感だけでなく、事件が終わった後の爽快感も魅力と言えます。

 SFミステリー

 設定にSFの要素を加えたミステリーの形式。

作品の一部、または、全部に、非現実的とも言える状態や現象・能力・世界観などを設定として取り込んだもの。

SFの要素はさらに他のジャンルともつながり、「SF本格ミステリー」や「SFサスペンスミステリー」など、多彩な展開を見せるジャンル。名作も多数存在します。

 日常ミステリー

 犯罪や法に触れるような事件ではなく、日常の中でふと目にするような不思議や謎・ちょっとした事件を扱うミステリーの形式。

「人の死なないミステリー」ともいわれ、海外ではアガサ・クリスティの「ミス・マープル」シリーズやアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」など多くの良作があります。

日本では、北村薫が多く作品を発表し、加納朋子や光原百合なども有名。

三上延の「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズなども多くのファンを獲得しており、人気が高いジャンル。

 ユーモアミステリー

 ユーモア調の強いミステリーの形式。笑いや可笑しさを交えて軽く読めるライトノベルズタイプのものが多いです。

泡坂妻夫の「亜愛一郎」シリーズや東川篤哉の「謎解きはディナーのあとで」シリーズなど、愛すべき作品も数多くあります。

ちなみに、現実性を意図的に無視したトリックと結末のバカバカしさが特徴のミステリー、あるいは、結末を知って「そんなバカな!」と驚くような、笑えるミステリーのことを、特に「バカミス」といったりします。

「バカミス」という言葉は1990年代後半から使われ出しましたが、侮辱する意味合いではなく、どちらかと言えば、作品世界の意外性や娯楽性を「バカな」という驚きと賞賛によって評価するものであると言えます。

また、読後の読了感がイヤな感じが残る、後味の悪いミステリーのことを「イヤミス」ということもあります。

 医療ミステリー

 医療ミステリーは、「医師または医療関係者」が「犯人もしくは主人公」のミステリーのことで、警察ミステリー同様、事件の謎解きよりも、医療行為や専門知識を利用したトリックや医療組織内での冷戦・暗闘がストーリー上重要な役割を果たしています。

海外では医療をテーマとしたミステリーが早くから作られ、近年では医療ミステリードラマ「Dr.HOUSE」や「BONES」が大ヒットするなど、医療ミステリーの質は高く、完全に市民権を得ています。

作家としてはロビン・クックなどが有名です。

日本でも、海堂尊の「チームバチスタの栄光」の大ヒットで、一般にもよく知られるようになりました。

海堂尊が最も有名ですが、他にも久坂部羊や仙川環、帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)などの作家が、医療ミステリー作家として知られています。

また、知念実希人の「天久鷹央の推理カルテ」シリーズなどの、今までの重い印象の残る医療ミステリーとはちょっと違ったライトな感じのものも出てきています。

国内最大級の総合電子書籍ストア【BookLive!】

紀伊國屋書店ウェブストアで全国紀伊國屋書店のベストセラーをチェック!